水俣の教訓を福島へ

 原爆症認定訴訟熊本弁護団編著;2011年8月6日初版発行

この本の中で矢ヶ崎克馬先生が内部被爆と外部被曝の違い、ICRP(国際放射線防護委員会)基準では内部被曝の問題を消し去っているという指摘がある。それに比べてECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)は内部被曝をちゃんと網羅している。「1945年から1988年の放射線による死者のまとめ」によると、癌死の比較ではICRPが117万人、ECRRでは6161万人としている。さらに小児の死亡ではICRPはゼロ、ECRRでは160万人と大差の統計結果となっている。その理由に放射性物質が牧場の草にも降り注ぎ、それを牛が食べてそのミルクを子どもが飲んでと,核実験のフォールアウトを考慮した緻密なカウントが内部被曝の犠牲者に入る。それは全くICRPの頭にはない。なぜICRPは内部被曝の概念を消し去ったかというと内部被曝を起こすのは埃であると定義し、例えば原爆投下に近い日にやってきた枕崎台風(1945年9月)がその埃を洗い流し、現地にはほんの少ししか塵は残らないとして、無視していたらしいと矢ケ部先生は語る。さらに全国平均(被爆地でない)と比べ被爆地の高い死亡率や罹病率の差異にドイツの女性科学者が注目。それに日本の科学者は目を向けなかったとある。水俣病では母親の水銀汚染が胎芽期の異常妊娠に影響した。もちろん放射線の内部被曝でも同様なことが起こったのだろうことは容易に想像できる。内部被曝はこれまで無いという前提でアメリカが作った放射能に関する世界観の中に閉じ込めたという流れを持つICRP。そんな内部被曝を重大視しないICRP同様に原発側に立つIAEA(International Atomic Energy Agency)が太鼓判をおした福島の汚染水を海洋に流しても大丈夫という後押しは海水や魚類における食物連鎖を考慮しているのか?。半減期12.32年の内部被曝問題まで検討したのか甚だ疑問。また海洋放出するのはホントにベータ崩壊するトリチュームだけなのだろうか?

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